まずは「人工知能」とは何かを見ていきます。人工知能は英語でArtificial Intelligenceといい、Artificialは「人工の」、Intelligenceは「知能」を意味します。この2語の頭文字を取った呼び方がAI(エーアイ)です。

人工知能の定義

人工知能は、認識、推論、判断、学習など、人間が知的に行っている処理をコンピュータで実現しようとする技術や研究分野です。写真に写った動物を見分ける、文章を別の言語に訳す、将棋で次の一手を考える、といった処理がその例です。

ただし、「人工知能とは何か」について、すべての研究者に共通する一つの定義があるわけではありません。そもそも知能のどの部分を再現したいのかによって、研究の対象が変わるからです。問題に正しく答えられればよいのか、人間と同じ方法で考える必要があるのか、意識や感情まで必要なのかでは、目指すものが違います。

Artificial Intelligenceという名称を研究分野の名前として提案した中心人物が、ジョン・マッカーシーです。1955年の提案書にこの言葉が使われ、翌1956年にアメリカで開催されたダートマスの研究会が、人工知能研究の重要な出発点となりました。ここでいう「会議」は、研究者が研究内容や構想を持ち寄る研究会です。ダートマス研究会の提案書

人工知能の分類

人工知能を考える一つの見方に、周囲の状況を入力として受け取り、それに応じた行動を出力するエージェントとして捉える方法があります。たとえば掃除ロボットなら、障害物の情報を受け取り、進行方向を変えます。

参考書では、こうした振る舞いをどのような仕組みで実現するかに着目し、次の4段階に整理しています。製品名だけで分類するのではなく、内部で使われている技術に注目してください。同じ種類の製品でも、搭載する仕組みは異なります。

レベル1:単純な制御プログラム

あらかじめ決められた条件に従って動作する仕組みです。たとえば、室温が設定温度より高ければ冷房を強め、低くなれば弱めるという制御があります。どの条件で何をするかは、人間が前もって決めています。

状況に応じて動きが変わっていても、経験から新しい判断の仕方を学んでいるとは限りません。「入力に応じて動くこと」と「学習すること」は区別します。

レベル2:古典的な人工知能

探索や推論、蓄積した知識を使って判断します。探索は複数の選択肢を調べて目的に合うものを見つけること、推論は既に分かっている事実やルールから結論を導くことです。

たとえば、掃除ロボットが部屋の状態から移動経路を探したり、診断支援のプログラムが専門家の知識に従って原因の候補を絞ったりします。単純な条件分岐より複雑な判断ができますが、何を知識として与えるか、どのように調べるかを人間が設計することが基本です。

レベル3:機械学習を取り入れた人工知能

機械学習は、データから規則や傾向を学ぶ仕組みです。たとえば、過去の道路の混雑状況と曜日、時刻などのデータから関係を学び、これからの渋滞を予測します。

すべての判断ルールを人間が書く代わりに、例となるデータを用意して、予測に使う関係をコンピュータに学ばせます。検索結果の並べ替えや、おすすめ商品の提示にも、この考え方が使われます。

レベル4:ディープラーニングを取り入れた人工知能

機械学習に入力する、データの性質を数値などで表したものを特徴量(とくちょうりょう)と呼びます。家賃の予測なら、部屋の面積、築年数、駅からの距離などが特徴量になります。「予測への影響が大きいこと」自体を特徴量と呼ぶのではありません。

画像から車を見分ける場合には、面積や築年数のように、何を測ればよいかを簡単に決められません。タイヤに注目しようとしても、見る角度や明るさで形や色が変わります。

ディープラーニング(深層学習)は、複数の層を持つニューラルネットワークを使い、判断に役立つ特徴の表し方もデータから学ぶ手法です。画像では、線や輪郭といった単純な特徴を組み合わせて、より複雑な形を捉えるような学習ができます。機械学習の一種であり、画像認識、音声認識、翻訳などに使われています。

AI効果

AI効果とは、人工知能が実現したことでも、その仕組みが分かったり、身近で当たり前の技術になったりすると、「それは単なる自動処理で、知能とは違う」と受け止められる現象です。

以前は驚きを持って受け止めていた文字認識や検索の仕組みも、日常的に使うようになると、AIだと意識しなくなることがあります。技術が使われなくなったのではなく、人間側の「AIらしさ」の感じ方が変わっているわけです。

人工知能とロボットの違い

人工知能とロボットは同じものではありません。ロボットを人の体にたとえると、状況を認識して行動を判断する「脳にあたる働き」が人工知能に近い部分です。一方、腕を動かす機構や、姿勢を保つ制御などもロボット研究の対象です。

また、人工知能には必ずしも物理的な体が必要なわけではありません。画面の中で将棋を指すプログラムや、文章を翻訳するシステムも人工知能の研究対象です。人工知能は主に知的な情報処理を扱い、ロボットは現実の環境で動くための身体や制御も扱う、と整理すると両者の関係を捉えやすくなります。